レペゼン社会不適合者

街からはじかれた社会不適合者Kayan-DDがHIPHOPの情報、アーティスト紹介などをしていきます

B.I.G.JOE【ラッパー解説】逮捕後、監獄から異例のアルバムリリースでシーンを騒がせた北海道エリアの第一人者

f:id:asukaksk:20171210135149g:plain

今回は異例の獄中ラップでかつての日本のHIPHOPシーンを賑わせたB.I.G.JOEさん(ビッグジョー・以下敬称略)の紹介です。

tha blue harb(ザ・ブルーハーブ)と共に北海道のHIPHOPの土壌を作り上げたクルーMIC JACK PRODUCTION(マイクジャックプロダクション)のメンバーとして台頭するも、オーストラリアにてドラッグ密輸で現行犯逮捕。

その6年の獄中生活でB.I.G.JOEのソロ名義で4枚のアルバムをリリースするという今までの日本語ラップ業界にはない事例が話題となり、彼の知名度は一気に全国に知れ渡りました。

まさに獄中での生の声をレコーディングし自分の現状を歌った楽曲はリスナーにとっては衝撃で、海外で投獄されるという絶望的状況を逆に武器にしたHIPHOPならではの復活劇はセンセーショナルでした。

獄中の過酷な環境から精神が不安定になり同胞ブルーハーブを突然ディスし、ビーフに発展したなんて事もありました(記事では割愛)。今回はそんなB.I.G.JOEの魅力とその軌跡を解説させていただきます。

 

 

北海道シーンのパイオニアの1人

北海道をレペゼンするグループから1番乗りで全国区となったのはやはりtha blue harb(ザ・ブルーハーブ)かと思いますが、その後を追うように知名度をあげていたのがB.I.G.JOEの所属するMIC JACK PRODUCTIONです。

現在の北海道のアーティストだと俳優として映画にも出演しているYOUNG DAISが所属するN.C.B.B(North Coast Bad Boys)が有名ですが、さらにその少し前の世代、まさに北海道HIPHOPシーンの創世記世代が彼らです。

彼らが台頭し始めた2000年代初期は、当時東京の第一線で活躍していたアーティストとはまた違ったポエトリーかつエモーショナルなラップが斬新で、冬にマッチするような雪国出身ならではの音源が多くあり非常にカッコよかったのを覚えています。

 

 

ドラッグ密輸で現行犯逮捕

しかし2003年、彼ビックジョーはオーストラリアの空港にてドラッグの密輸で現行犯逮捕されてしまいます。当初、この刑事裁判に関して担当弁護士からは「『何も知らないで運ばされていた』で押し通せば70%くらいは勝ち目がある」との事で無罪を勝ち取ろうとしていたそうです。

しかし検察側が切り札として彼のバッグに入っていたリリックブック(歌詞を書くノート)を提示。そこに書かれていた彼の楽曲『IN THE DARKNESS』の歌詞が彼にとって大きな仇となります。

 

『裏路地で俺は生きていくために金を稼いだ。小分けしたヤクをいくつも売り捌いた。』検察側は日本語で書かれたこのリリックノートを全て英語に翻訳し、この歌詞を提示する事で「この容疑者はドラッグに関わっている人です」という証明をしたのです。

これでビッグジョーは言い逃れが出来なくなり実刑6年の懲役刑に課せられる事になります。皮肉にも『リアルな日常を歌にする』というHIPHOPルールが嘘を付く事を許さなかった、とも言えるかもしれません。

 

 

絶望的な状況を武器に躍進

6年間海外で1人投獄されるという事を想像すると、常人ならばこの状況で前向きな思考などできない人も多いとも思いますが彼は「曲を作る側としては牢屋の中はネタの宝庫だったんです」と話します。

その刑務所では10分間だけ電話をできる時間があるらしいのですが、そこでMIC JACK PRODUCTIONのメンバーに電話をしてその刑務所内の電話からラップをしてそれを録音してもらい音源にするという日本初のリアル監獄ラップレコーディングを始めます。

 

さらに刑期が進んで刑務所の移動があり、そこでは構成カリキュラムに音楽プログラムがあったそうでそこではレコーディングスタジオを使う事ができ、獄中でのセカンドアルバムから外と何ら変わらないデジタル音源でのレコーディングも出来るようになります。

この噂を聞きつけた日本のレコード会社の人間が刑務所まで会いに来て「ウチでアルバム出さないか?」という話にもなり、彼のアーティスト活動は刑務所に入った事で逆にどんどんと加速していきます。

 

結局彼は出所までに4枚のアルバムを獄中からリリースし、この獄中ラップは当時の日本のヘッズの間でもかなりの噂になりました。個人的には電話越しレコーディングのラップの音質が非常に荒い1枚目が一番好きです。あの音の悪さが逆に獄中の悲壮感をリアルに漂わせていました。

 

 

獄中からのリアルなラップを体感せよ

曲紹介は電話越しの獄中1st『THE LOST DOPE』にしようか迷いまいしたが、こっちの方が聞きやすいので4thから『No Where』にします。

『看守の扱いは酷いもんでさ、「ほらよ」とミールを足蹴りよこし、ネズミを見るような目で罵った、そこには人権なんてものはないのさ、プライドなんて最低の値打ちもありゃしない』

 

「自分はポジティブだったんでしょうね笑」と彼は話します。今回彼のしてしまった事は犯罪ですが、絶望的な状況下でも希望を失わない彼のマインドから是非パワーをもらっていただければと思います。

この部分ばかりピックアップしてしまうと悲壮感漂う曲ばかり作っているような感じがしてしまいますが、決してそんな事はないので気になった方は是非とも彼の最近の音源もチェックしてみて下さい。

 

他にもたくさんのラッパーを語らせてもらってます。良かったらこちらから覗いてやって下さい。ラッパー解説 カテゴリーの記事一覧